どうしてこんなことになったのか分からない。
でも、画面に流れる文字を見ていると涙が溢れて止まらない。悲しいのは画面向こうに知り合いの影が幾つも見えるからかもしれない。
回りにはわからなくても、これは誰が書いたんだなってわかるものが沢山ある。中には同じ部にいた子が幾つも書き込んだりしていて、そんなに嫌われていたんだなと思った。
いじめがあった。断定されているけど、そんなことは一度だってなかった。何で知らない人たちが勝手想像を補完していくのか理解できない。
どうして私の話を誰も聞いてくれないのかわからない。
「……疲れたなぁ」
間延びした声が風呂場に響き、反響してさらに響く。声にしたら余計に滅入って、手にしていた携帯をわざと落とした。
途端に手から離れた携帯は、湯船の中に沈み数秒後にその画面から明かりを消した。それを眺めている間にも水面には涙が滴となって落ちていく。
お湯から立ち上るのはお気に入りの香り。新緑を思わせるようなその香りを深く吸い込むと、風呂の縁に置いてあった包丁を手に取る。光りを受けて刃先が鈍く光ったけれども、これといった感慨もない。
こんなことは一生の一瞬のことだからって大人は言った。でも、その一瞬が私には長すぎて、もうこれ以上耐えられなかった。
頑張ったよね————?
問い掛けてみたけど、誰に問い掛けたいのかもわからない。ただ、自分の中にも答えはない。
苦しくなければいいな。そう思いながら右手で握り締めた包丁と共に左手をお湯の中に沈める。そして————。